四畳間

幼女の備忘録と感想文

コップと水の界面のモデリング

透明な容器に透明な液体が入っているというシーンのモデリング方法について考えてみます.

 

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図1 コップに入った液体のモデリング方法

 

コップに液体が入っている,という静的なシーンをモデリングする際,コップと液体をそれぞれ物体としてモデリングすると思います.その場合図1(a) のように,コップ (黒輪郭) と液体( 青輪郭) のオブジェクトの間には,交差を含めて微妙な空間が発生するか,あるいは二つの面が完全に重なるかのどちらかになります (現実には二つの面は完全に重なっています).この場合,下記の問題が発生する可能性があります.

  • 物理現象の正しさについて
    コップから液体への間の光の伝播について考えると,光は本来コップ→液体と伝播します.一方コップオブジェクトと液体オブジェクトの間に隙間がある場合は,コップ→空気→液体と伝播します.細かいことなので気にする必要はない気もしますが,現象としては異なっています.
  • レンダラの挙動について
    コップオブジェクトと液体オブジェクトの界面が重なっているように見えても,数値計算上,界面が完全に重なるということはありません (ゼロ付近の小さい値になる).しかもその距離が場所ごとに異なっている (はずな) ので,界面内の場所ごとに光の伝播の状態が変わる可能性が高くなります.コップオブジェクトと液体オブジェクトが接していることを察して,両物体の間の屈折率を考慮し,それに基づいて光の伝播を計算してくれるレンダラがあればいいですが,そのような可能性は低いと思います.

ということで,界面での現象を真面目に再現するのであれば,図1(b) のように界面を個別にモデリングし,それぞれの界面に対して適切な屈折率を設定するということが必要になるのではと考えられます. 今回はこのことを,モデラはBlender,レンダラはCyclesを使って検証してみました.図1(a) のレンダリング結果が図2(a),図1(b) のレンダリング結果が図2(b) です.コップと液体の界面のうち,側面は不自然に見えませんが,底面は問題②として書いたことが起こっている様に見えます.

 

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図2 レンダリング結果

フォトリアルなCGを描く上で普段気をつけていること

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採算とか時間を考えず,趣味としてリアリティを追求する上で気を付けたりしていることを,今回のCGを例にしていくつか書きます.

 

①形状のゆがみ

無数の星から特定のいくつかに注目して人や動物の形を見出すように,人間というのは雑多なものののなかにパターンを見出すのが得意です.CGっぽさが生まれる理由に”揃いすぎている”というものがあります.例えば,植木や車が綺麗に整列しすぎているなどです.仕上ミル上部のデッキの手すりは,もともとは一切形状の歪みがなかったのですが直線ぽさが気になったので途中で形状を歪めました.まあ,実際の工場内部の手すりも,過去にものをぶつけて曲がっていたり,途中で追加したために不揃いだったりすんですが.

 

②照明の色

これも①と同様で,照明の経年変化によって明るさ・色が個々の照明で異なることを再現しています.

 

③窓かさ差し込む光の筋

これも①②と同様です.

 

④ロールの回転角

これも①〜③と同様です.

 

⑤部品の接触界面

世の中の物体は,よほどのことがない限り隙間ゼロで接触していることはありません.物体と物体が接触している部分には必ず隙間があり,そこはすごく暗く見えます.複数の物体の接触面では,隙間をわざと開けたりして影を再現します.もちろん,影だけではなく汚れによって黒くなっていることもあります.

 

⑥物体の反射率

世の中の物体は,思ったよりも周囲の物体を反射します(反射率がゼロではないということ).ざらざらしているからといって反射率をゼロにすると,なんだか不自然な感じになります.

熱間圧延ラインのCG (3DCG of Hot strip mill)

長いので,本文では熱間圧延ラインのことを熱延ミルと略記します.

 

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なぜ熱間圧延ラインか

工場見学イベントで熱延ミルを見たときに,「携わっている人にとってはただの日常風景だけど,そうでない人には多分一生認知されない格好いいものがあるんだなあ」と思い作りました.

 

今回作った熱間圧延ライン

作品のコンセプトは「毎日見ている景色」でした.一方で熱延ミル自体のコンセプトは「旧式のハードウェアと最新のテクノロジ」です.想定しているのは1970年代に建設されて,技術の進化とともに設備と制御システムが更新され続けて現在に至ったミルです.例えば絵の右半分に見えている仕上圧延機は,フレームだけは建設等時のままで,あとから中間ロール・ロールシフト装置・高速応答圧下装置が少しずつ追加されて現在に至った,と想定しています.趣味的な考え方ですが,「旧式の設備を最新のテクノロジで復活させて新型の設備と遜色なく戦えるようにする.遜色なく戦えているけど,ベースが旧式なのでやり方は新式のものとは異なる」というのはロマンがありますね.例えば,このCGに出ている仕上ミルも改造当時の技術的判断で中間ロールシフト方式となっていますが,現在では熱延ミルに対して中間ロール方式は絶対選ばれないといった具合です.

(下記参考)

 

shirashinomiya.hatenablog.com

 

 

 

ちなみに,レンダリング範囲に入ってはいませんが,熱延ミル全体は下図のような構成を考えています.加熱炉・粗圧延機・仕上圧延機・冷却機・巻取機から構成されるごく一般的な構成のミルです.粗圧延機に関しては,最新の思想に基づくと1基とか2基になるんじゃないかと思います.このミルは古い思想に基づいているので3基構成です.サイジングプレスはスペース不足で設置できなかったので各粗圧延機に強力なエッジャを付けた,みたいなことを考えています.

 

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モデリングの過程

たくさん下絵を書きます.

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モデリング開始.まずは仕上ミルのハウジング(ロールがはまってるフレーム).

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ちょっと物が増えます.

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テクスチャをつけていき,複数の設備を並べていきます.

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工場の建屋内にあるということで,駅構内のHDRIをIBL用の背景に使って作業を進めていきます.

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なんとなく建屋ができてきます.

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建屋が完成.背景をIBLから太陽光を模擬した照明に変更します.

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建屋内に湯気や粉塵に伴う霞要素(Volume scatter)を追加します.

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レンダリングに使ったモデル.

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Blender Cyclesで,Quick effectsのsmokeを明るくレンダリングする

レンダラとしてCyclesを使う場合で,クイックエフェクトで作った煙のマテリアルを設定するときに役に立つかもしれないメモ.
薄暗いシーンでは,デフォルトのマテリアルだとVolume Absorptionの効果が強すぎて,どうにも煙が暗くなってしまうことがある.煙をなんとか明るくレンダリングする方法として使えるかもしれない.物理的な正しさよりも,それっぽさを優先させている.

 

生成した煙.

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マテリアルの設定.

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レンダリング結果.

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Macintosh SE/30を解体した

面白いハード”は”好きだ,という趣旨の話をあちこちで話していたら,知り合いがMacintosh SE/30をくれた.昔本当に仕事に使っていたものをずっと持っていたけど,引っ越しを機に手放すとのことだ.運ぶときにシャラシャラ音がしたので,電池か何かが液漏れして粉だらけになってると思われる. 電気的な修理はあきらめて,ケースを再利用する方向でいくことにした.

 

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まず,外側のカバーを外す.この型のマックはこの4箇所のネジを外せばいい.昔からApple製品では,安易な分解を防ぐために外側のカバーに特殊な形のネジが使われていることが多い. ただし,この時代のマックに使われているネジは,頭の丸い六角レンチを押しつければ回すことができる.

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カバーを完全に外したところ.ケース内部の体積のほとんどがブラウン管のために使われている感じ.

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いったんカバーを開けてしまえば,内部のネジは大体プラスネジだから比較的簡単に分解できる.
電源はソニー製だ.

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ロジックボード。 ROMM-SIMMからプロセッサあたりがサビまみれ。

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8つもあるSIMMスロットとそこにいっぱいまでささったSIMMは,シンプルなボードのなかでは存在感がある.

 

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裏面(一応).

 

今回はここまで.

 

追記:続編はこちら

 

 

Blender Cyclesでのプロシージャルモデリングなグラデーション

Cyclesでレンダリングするときの、プロシージャルなグラデーション表現方法のメモ。
図1内のNormalizeはなくても問題ない場合もある。

 

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図1 マテリアル

 

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図2 図1の設定でのレンダリング結果

Blender Cyclesでの水の質感表現

Cyclesでレンダリングするときの、水の質感のメモ。
シチュエーションは、水が滝のように流れている静止シーン。
物理的な正しさよりも、それっぽさを優先した場合。


まず、図1のようにGlass BSDFのみを使った場合。
この場合、図2のようになんだか物足りない感じになる。

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図1 マテリアル

 

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図2 図1の設定でのレンダリング結果

 

次に、図3のように設定してエッジを光らせてみる。
なんかそれっぽくなる。

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図3 エッジを光らせる設定

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図4 図3の設定でのレンダリング結果