四畳間

幼女の備忘録と感想文

Macintosh SE/30のブラウン管の前面ガラスを取り出して研磨する

以前,古いMacintosh SE/30を解体したという記事を書いた.修理がほぼ望めないから,その見た目を活用する方向で再利用するのが良さそうだという話.前回はケースについて書いたので,今回は後編,ブラウン管の前面ガラスについて書く.

 

1. なぜケースと前面ガラスか

Macintoshを観察すると,外から見えるのはケースとブラウン管の前面ガラス.つまり,これらを残しておけば,見た目を活用する使い方であればどんな使い方にも対応できるんじゃないかと思う.最低限であればケースだと思うんだけど,資料によると,前面ガラスの曲面もデザインの一要素らしい.難度は高いけど,前面ガラスも残すべきだと思う.

 

2. 前面ガラスの再利用作業〜概要

詳細な解説は省くけど,ブラウン管というのは,内側に蛍光塗料がついた前面ガラスと,後部の電子銃から構成される真空管だ.ガラスの一体物なので,前面ガラスを取り出すには,前面ガラス部分を割らずにそれ以外の部分のガラスを割る必要がある.前面ガラスを取り出すだけならこれで十分.しかし,内側に液晶ディスプレイを仕込みたいなどあれば,内面の研磨が必要になる.というのも,前面ガラスの内側は,高低差0.5 mm程度の凹凸面となっている.前面ガラスそのものに画像を投影するならともかく,前面ガラスを透過して何かを見たいのであれば,この凹凸が邪魔になるからだ.今回はここまでやってみる.

 

3. 前面ガラスの取り出し作業

ブラウン管の全体像図1(a).図1(b)の上側が前面ガラスで下側が電子銃.

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図1 取り出したブラウン管.

 

まず,真空になっているブラウン管内を大気圧にする.外側に向けて圧がかかっているわけではないので問題はないはずだけど,気圧差で思わぬ割れ方をするのが怖いので,真空は解除した方がよいと思う.図1(b)の右側面に吸盤みたいなものがあるので,これに穴を開ければよい. 実際にガラスを割っていく.

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図2 ガラスを割る作業.養生と傷つけ作業の様子.

 

図2のように割りたいところを残して養生テープで飛散対策を行い,かつ大面積で割れないようにガラスカッターで“歯止め”用の傷をつけながら,レスキューハンマーなどを用いて割っていく.図3のように開口部を適宜養生しながらこの作業を繰り返していくと,図4のように前面ガラスを取り出せる.内側が銀色なのは蛍光塗料が付いているから.なお,前面ガラス外面には保護のため,養生テープとガムテープを重ね貼りしている.

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図3 作業中の様子.

 

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図4 取り出した前面ガラス.

4. 前面ガラスの内面の研磨作業

図5(a)は蛍光塗料を取った前面ガラス.実はこのガラス,内面に凹凸がある.図5(a)のように,下に敷いた段ボールの某EC業者のロゴがボケて見える.図5(b)は少し斜めから見たところ.こちらの方が,なめらかな面ではないことがわかりやすいかも.

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図5 取り出した前面ガラス.

 

まず,凹凸を根こそぎ除去する.ガラスを厚さ方向に0.5 mm程度剥ぎ取る必要があるので,研磨量をかせぐために粗目 (#60とか) の耐水研磨紙で粗研磨する.この作業はドライ条件で手研磨にて行った (図6(a)).

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図6 研磨の様子.

 

ここから,透明に見えるくらいなめらかな表面を目指して,粗研磨でできた傷を除去していく.まずは研磨紙を使った研磨.手研磨ではしんどいので電動ドリルの力を借りる.使うのは,直径25 mmで研磨紙を付ける部分がスポンジになっているアタッチメント (図6(b)).直径が大きいと角部が研磨しにくいことと,研磨対象の面が曲面であることを考慮してこのようなアタッチメントを選んだ.研磨条件はウェットで,番手は次の順にした.

#100→#240→#500→#1200→#3000

基本的な考え方は,前の番手でつけた傷を次の番手で取るというものなんだけど,粗研磨の時の傷が思ったよりも深くて,それを除去するための#100での研磨にかなり時間がかかった.

やってみて分かったのは,ドリルの回転数は3000 rpmのようにかなり早めにする必要があることと,回転が定常状態になってから研磨紙をガラスに当てる必要があること.低速で当てると,むしろ深い傷を入れてしまう.

次は研磨剤を使った研磨.ここでも電動ドリルの力を借りる.本当は専用のクロスがいいんだけど,今回はバフを使った (図6(c)).研磨剤は次の順に使った.

3 μmのアルミナ研磨剤→酸化セリウム研磨剤

研磨の結果は図7.前回の箱がなくなってしまったので,今度は某有名PCメーカーの箱の上に置いてみた.

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図7 研磨後の前面ガラス.

 

図7(a)が全体図で,(b)がロゴ部分の拡大図.光を当てる角度や見る角度を色々と変えると粗研磨の跡がまだ見えるけど,裏側に置いた絵や画面を表側から見るぶんには全く気にならない.とりあえず当初の目標は達成されたんじゃないかと思う.

将来気が向いたら,今回の経験をもとにもっと綺麗な面を目指して再研磨しようと思う.